わにわにinterview「ウラカタ伝」 (わにわに伝)

ふだん表に出ないけど、面白そうなことをしているひとを呼びとめ、話を聞きました。

スタントマンについて知りたい。ⅳ

スタントマンから「アクション監督」となった、
大内貴仁さんに聞きました。【4/6】
 

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 わにわにinterview アクション監督って、どんなことをするの

達人なんだけど、根は「凡人」⁉

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大内 ぼくね、たまに自分の範囲を超えたことをしたがるみたいなんです(笑)。
 小学校4年のときに「山村留学」というのに行ったんですよ。過疎化の村で一年間「学校」を経験するというもので、奈良の御杖(みつえ)村というところ。こないだ親に聞いたら、ぼくが新聞の切り抜きを持って「これに行きたい」と急に言い出したらしい。

── ホームスティみたいなものですよね。

大内 そうです。知らない家に一年間預けられる。どう考えても、性格的に行きたがるはずないのに(笑)。また無理してクチにしたんじゃないですかね。

── ご両親は許可してくれたんですか?

大内 「そんなに行きたいんやったら」と。だけど親もね、一年も離れて生活するとなると淋しかったんだと思います。

── 他人の家にひとりというのは大変でしょう?


大内 香港とは意味合いがちがうんですが、ひとの家に入るというのは、そこの空気を読まないといけない。お世話になった家には、年上の子供たちがいて「お兄ちゃん、お姉ちゃん」言うて過ごすんですよ。
 ぼく以外の留学生たちは、それぞれ日が経つうちに里親を「お母さん、お父さん」と呼んでたみたいです。そういうことを知らず、留学を終える最後の日に、「あんたはとうとう最後まで、オバチャンやったな」って里親に言われたのをよく覚えてますね(笑)。

 当時、
食卓のシャケの皿を見比べ「自分のだけが小さい」と僻んでみたりしていたという。

大内 そう見えていたということで、もちろん、そんなことなかったと思うんですよ(笑)。
 ただ、たとえそういうふうに思っても、帰るわけにはいかない。自分で宣言してきていたから。そのとき覚えたのが、「郷に入れば郷に従え」です。

── 香港の宿でも、そういうことおっしゃられていましたよね。

大内 ハハハハ。ぜんぜん、これスタントと関係のない話になりましたけど。

── いや面白いです。続けましょう。
 
大内 面白いんですか? ほんとに?

── 一見かけ離れているようだけど、小学生のときの山村留学体験があったから、香港でも辛抱できたんじゃいないですか。どちらも自分で逃げ帰れなくしている。面白いですよ、負荷のかけ方が。
 いまの仕事の仕方にしても、準備の段階でコンテのビデオを作成したりするのは、おそらく「予算を費やした以上は、いいものを作らないといけなくなる」わけですよね。

大内 「負荷をかける」ということではそうかもしれないですけど、ビデオはつくるのは、考えていることを、ほかのひとに伝えやすいことが大きいかなぁ。
 映像にすると「こんなふうになるんです」と、イメージが掴みやすい。「このタイミングで跳ぶので、ワイヤー操作で引っ張って壊す」と手順をしゃべっていたときには、「それ、時間がかかりますよね」と否定的だったのだが、現場のスタッフにまず映像を見せると、「これをやろう」と目の輝きからちがってきますから。

── 何が有効かということでしょうけど。映像は、わかりいいですからね。

大内 特にアクションは、わかりやすくもあり、わかりにくいものでもありますからね。
 たとえば、よく台本で「誰々の物凄い一撃が腹に……」とか書いてあるとするでしょう。そういう一撃を映像表現されたものもありますが、たいていの場合、一瞬だけを映像でとらえると、見た目に「普通のパンチ」でしかないんですよ。
 これが小説や漫画だと、「物凄い一撃」をいろいろ言葉でもって補足できたりするんですけど。映画で、そういうテロップは入れられないですからね。
結局「物凄い」が一瞬の場面としては伝わりづらく、どう見せるかを工夫してゆく。前後のアクションの流れがあり、そのなかで「一撃」をみせたほうが「強さ」がわかるよねってなったりする。そういうことを理解してもらうためにもサンプル映像は必要だと思います。


f:id:waniwanio:20150905123930j:plain   # アクション練習。壁を蹴り「敵」の背中を飛び越える。手本を演じる


ここでスタントマンの仕事とはすこし離れるが、じつは大内さんが「ものづくり」を意識したのは大学時代の「プロレス」のショーだったという。

大内 学園祭でプロレスをやったんですよ。友人にアントニオ猪木にアゴが似ているのがいて、そいつを一度リングにあげたい、それだけのためにやったようなもので。全員素人で、リングとかもお金を出し合ってこしらえたんです。そういう仕切りをやったりするうちに、「つくるのってなんや楽しい」と思った。それが最初だと思うんです。

── リングはどうやって?

大内 まず友人の酒屋の知り合いに頼んでもらって、酒のケースを借りてきて、リングポストに仕立てました。ロープは工業用のものに黒いテープを巻いて、入場するときの衣装も、ホテルの白いガウンあるでしょう。

── どこかの団体のリングを借りてきたんじゃないんですね?

大内 その時は、そんなお金も発想もありませんでしたね(笑)。
 DVDの映像を見て、「このシーン、面白いよね」って思ったところを適当に組み合わせたりして。ぼくはタイガーマスクをして、マスクを触るしぐさとか、動きとかを真似したりしてました。
 見ます?(とノートパソコンを操作、動画を映し出す)。
 当時はもちろんスタントをやりとかいうことはまったく考えてなくて。高校、大学とレスリングを七年間やっていました。高校の時に、最高、近畿の2位までいったことはあります。

── レスリング、ホンモノなんですね。

大内 いえいえ(笑)。これです、これ(マスクマンが対戦者を威嚇し、リングを軽快に動きまわっている)……タイガーマスクの足の細かい動きをコピーして、ショーにしたんです。ひとに見せるというのがこんなに面白いんや、というのが後々につながっているのもしれません。いま思えば、ですけど(笑)。
 まあ、スタントにつながっていることといえば、レスリングをやっていたことも大きいと思います。

── というと?

大内 レスリングは、常に予想しないタイミングで投げられるんですよ。だから、どんな状況で投げられても、とっさに身を守る「受身」がとれないといけないんです。せめて頭からは(地面に)刺さらないように身を翻したりだとか。イメージとしたら、猫が高いところから落ちるときの身の守り方に似ているかもしれませんね。
 公園とかで、やったこともないアクロバットの練習を怖がることなくできていたのも、レスリングの経験が大きかったと思います。

── レスリングの経験は、すごく役立っているんですね。


大内 でもねぇ、いまだから言いますが、自分としてはレスリングって、好きやなかったんです。キックとかカンフーとか流行っていた時、空手を習っていたんです。

── ジャッキー・チェンが好きだと言われていましたものね。

大内 そうです。小学生の高学年くらいのときに、初段をとって黒帯になったんですよ。でも「ここから上は中学生にならないと」と言われて、「えっ、じゃ、その間何したらいいんやろう?」と思ってやめたんです。上達すとともに帯の色が変わって、昇段することが楽しみだったんですよね。

── 理不尽ですね。では、中学に入ってからは?

大内 野球やっていました。「じゃぁ、なんでレスリング?」と思うでしょう。思いますよね(笑)。
 ぼく、生まれたときに心臓に小さい穴があいていたらしくて、年に一回エコーをとりに病院に行ってたんです。陸上やろうと思っていたんだけど、医者から「走るのはダメ」と言われて。
 だったら「なんでレスリング?」ですよね(笑)。
 高校に入ったら、「レスリング部は、現在大学進学率100%!!」という貼り紙を見て、なんとなく見学に行った流れでね……。なんや言うてて、なんかめちゃ恥ずかしくなってきた。これカットですね(笑)。

── 進学に有利じゃないか、とつい心が動かされる。そういうフツウーな話、好きです(笑)。

大内 好きって、変わってますね(笑)。
 そのレスリングも、顧問の先生から「もっと練習したらトップ取れるぞ」と言われたんですが、ぼく、練習が嫌いやし、努力嫌いやし(笑)。でも「あいつには、ぜったい勝たれへんぞ」と言われたら勝ったりするんです。で、負けるはずのないやつに負けたりもして……。自分でもようわからんやつでした(笑)。

── 大内さん、ふつうーに面白いですね(笑)。

大内 ひとから「ぜったい無理」とか言われると反骨精神みたいなんで頑張れるですかね。

── オリンピックとかも、頑張っていたら?

大内 それはないです。オリンピックまで行くには、こんなムラのある性格はダメなんです。ひとの何倍も練習している人間しかその舞台には立てないでしょうし。そこがもうちがうんです。それで香港に話を戻しますね。

── ああ、はい。そうしましょう。

脱線してしまったが、軌道修正し、次回は「香港でどのようにしてアクションのキャリアを積んでいったのか」の話です。

 

取材・文責=朝山実
撮影=山本倫

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☟つづく


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