「ウラカタ伝」

ふだん表に出ないけど、面白そうなことをしているひとを呼びとめ、話を聞きました。

靴の「うずら」が、たっぷりお客さんの話を聞こうとする理由

【わにわにinterviewウラカタ伝⑩】
靴職人uzuraさんに聞く【1/3】

 

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インタビュー・文=朝山実
写真撮影 © 山本倫子Yamamoto Noriko



「足はみんな同じではない。
   顔よりも多様かもしれない」


 開業して13年になる手作り靴「uzura うずら」の高橋おさむさんは、足を見るのが大好きだという。甲の高さや足幅、指の長さ。木型づくりを担当し、これまで千人近くの足を計測してきたが見飽きることはない。

「スラリとした女性の足が力強いかたちをしていたり、足と顔つきとが一致しなかったり。サッカーをやっている人だと、蹴る足と軸足によってちがいます。剣道だと、スルほうの足と踏ん張って飛び出すほうの足では、足裏のちがいが顕著ですね」

 ワタシはろくに自分の足すらろくに見ることなどしてこなかったから、高橋さんの話を聞いて、へーと驚いた。

「うちに来られるお客さんのなかには『わたし、ヘンな足なので…』と自分を責めているひともおられます」
 と、語るのは共に「うずら」を立ち上げた高橋ひろみさん。ふつうにオシャレをしたいのに、合う靴が見つからない。外反母趾や若年性リューマチのほかにも、うずらを訪れるお客さんには、長年悩みを抱えてきたひとが多いという。

 うずらでの靴を注文するには、顧客個人の木型づくりからはじめる「フルオーダー」と、うずらのオリジナルサンプルから選ぶ「セミオーダー」とがある。
 お客さんの足を計測するところまではフルもセミも同じだが、セミオーダーだの場合だと、すでにある木型をもとに、採寸した足に近づけるため微調整(たとえば甲が高ければその部分に革を張り足すなど)したものを使用する。いずれも工房に来店(年に数回、場所を借りての受注展示会もある)してもらい、足を採寸したうえでの製作となる。

 おふたりに話をうかがうまでは、わざわざ靴をオーダーメイドしようというのだから、さぞかしワクワク感を発散した人たちが来店するのだろう。そう思いこんでいたのだが、意外にも「不安」や身をかたくしてやって来るひとが多いのだという。なぜなんだろう?

 

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「それは、まず来てみたら店でもない、家だし(笑)。玄関を入るところでみなさん、表情が強張っています」(ひろみさん)

 たしかに玄関に立ったところで「……ここで合っている?」ワタシもベルを押すのを躊躇し、周囲を見回した。
 ドアが開くと、おふたりが揃って廊下の先に立っていた。スリッパを出され、応接室を兼ねた作業場に入ると、ネコと目があう。挨拶代わりに身体をすりよせてくる。ひろみさんから「ネコ、大丈夫ですか?」と聞かれた。

「きのう来られたお客さんも、足が細くて合う靴がない。来年から社会人だというのに暗い表情をされていて、家で猫を飼っているというのでタビを少しでも気持ちをほぐしてもらえたらと傍につれてきました」

 ふたりが営む「うずら」の工房は、東京都足立区内、千代田線「北綾瀬」駅から徒歩10分ほどの住宅地にある。
 大きな道路沿いを進み、小学校近くの敷地に踏み入る。柿の木が茂った庭があり、外観はごくふつうの民家としか見えない。ちなみに「タビ」は9歳の牡猫で、拾った仔猫の時は足袋を履いているように見えたそうだ。

 

f:id:waniwanio:20170820193835j:plain☝招き猫の「足袋」くん

「うずら」のことを知ったのは、以前この連載にも登場してもらった写真家のキッチンミノルさんのツイッターのフォロアーを眺めていたときだった。黒革の紳士靴の写真が目にとまったのだ。新品に見えたが、修理したばかりだという。眺めているうちに父の靴を思い出し、懐かしい思いになった。

 ちょうど「週刊朝日」(2017年5/5号掲載)で「昭和な職人さん」を取材する特集企画を立てていたところで、取材をお願いしてみた。「ひと昔前まではよく目にしたけれど……と言うのはチョット待って!いまでもバリバリ現役ですよ‼」という職人さんたちを紹介する趣旨で、タイプライターの修理、楽譜の写譜、オーダーメイドのセルロイド眼鏡職人、銭湯のペンキ絵師、食品サンプル工場を取材させてもらった。

 ワタシが小学生の頃(1960年代)には、いろんな修繕の人や販売の人が村の家々を訪ねてまわっていたものだった。
 傘の張替え。鍋の修理。包丁研ぎ。クジラのコロを扱う乾物屋。置箱の胃腸薬や風邪薬を補充していく「富山の売薬」のおじさんがやってくると母親に寄り添い、紙風船やゴムの風船が出てくるのを楽しみにしていた。
 大阪に近いとはいえ稲穂の田んぼが広がり、幹線道路沿いに小さな食品スーパーが出店したときには子供たちが溜まり場にするくらいに田舎だった。休日に靴の修理屋さんがやってくると父が靴箱から何足も出し、靴底に金具を打ち付けるのを眺めるのが娯楽でもあり、道具箱をしまい帰ろうとする職人さんの後をついていこうとしたこともあった。

 だから「修繕」のことに当初は意識がいっていたのだが、そこはワタシのちょっと誤解で、うずらの修理はアフターケアで、基本は「つくる」ことにある。ただ、自分たちがつくった靴が戻ってきたときに履かれ具合を確かめ、修理して再びお客さんのもとへ送り出すのはふたりにとって嬉しい時間だという。奉公に出した子供が三年ぶりに帰ってくる落語の話があるが、そんなものなのか。

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 初めて取材で訪れたとき、暗い顔のお客さんが珍しくないと聞いて、意外であるとともに「わかるなぁ」とも思ったものだった。実はワタシも靴で嫌な目にあってきた。
 靴を買うぞぉ。そう思って出かけ、何軒もまわったのに買えずに帰宅することが多かった。理由は、足が小さい。成人男子にしてはかなり。24、5㌢からが一般的で、靴を選びサイズを伝えると、熱心だった店員さんが傍からいなくなる。
 10数年前にたまたま入ったリーガルショップで、店頭にはない小さいサイズも生産しているので仕入れてもらえるというのがわかってから靴はココと決めてきたが、これまで「注文して作ってもらう」という発想が一度もわかなかったのはどうしてだろう? 「贅沢」だという先入観が強かったからか。
 唖然としたのは、おおかたインタビューを終えたあとに、おさむさんに促されて採寸してもらうと、長年目安としていたサイズよりも、実寸で1㌢短いことがわかった。「来られた男性の中では最小です。これだとお店ではないしょうね」。慰められつつ、トホホ。なんとなく「このサイズ」と履くことが出来ていた靴たちは、ワタシの甲が標準よりも高いのと足幅が広いので先端はブカブカでも締め付けられていたためらしい。

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「お客さんとは、じっくり話をうかがいます」とおさむさん。耳を傾けるうちに一時間を超えるのはもっぱらだという。
 のちにオーダーメイドの靴屋そのものはそんなに珍しいものではないことは調べてみてわかったが、「うずら」のふたりに会って面白いと思ったのは、「聞き取り」の丁寧さだった。デザインなどの好みはもちろん、来店までの事情なども聞き取りした上で靴の製作にとりかかる。カウンセリングをおもわせる。
 ふたりは「じっくり聞かないと作れない」という。しかも原則ふたりで聞く。効率や合理化を考えるなら、ひとりが聞き「情報を共有化」したほうがいいのでは。素人目にはそう思えるのだが、ふたりで聞くのは欠かせない工程らしい。

「うちに来られるお客さんは女性が多いんですけど、話すことで気持ちが開放されていく印象があります。これまで自分に合う靴がないのは『あなたの足がおかしい』というようなことを店員さんから遠まわしに言われた方もいて、『じゃあ、わたし、どうしたらいいの?』と思ち込みますよね。そのお客さんは、もう何足も作らせていただいていますが、来られるたびにどんどん表情も変わっていって、こういうことがあるんだなぁと嬉しくなりますよね」(ひろみさん)

 

f:id:waniwanio:20170820193950j:plain☝おさむさん愛用の工具たち


 2004年に東京都練馬区大泉学園に「うずら」を開いてから二度転居し、現在の北綾瀬に工房をもったのは2012年から。革を縫うミシンの音や、カナヅチでトントンしたりする音が響いたりすることから貸してもらえる物件は限られる。家賃も安いにこしたことはない。さらに条件を難しくしているのが「飼い猫あり」。最初の引越しは、捨てられていた猫を育てることになったからだという。

「猫と靴ですからね。いまのところもなかなか物件が見つからなくて困っていたときに、築40年で大家さんが取り壊そうと思っていたのを知り合いに紹介してもらい、取り壊すまでに間ということで貸していただくということになったんです。お庭の面倒も見るという条件で」(ひろみさん)

 

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 うずらを再訪したのは2017年7月。雑誌での取材後に展示会を覗きに行き、その際にオーダーした靴の引き取りとともに再度インタビューさせてもらった。ちょうど、ひろみさんが使用する牛革を問屋さんから持ち帰ったところだというので見せてもらった。

 革は、布のように必要な寸法ぶんを買うということはできない。まるまる一頭分か半分の大きな「革」を購入することになる。生き物だけに皮革には、個体特有のキズやムラが残っている。合成皮革にはない天然物ならではの「個体差」があるということでは、ある意味、足の形状と似ているかもしれない。
 うずらで使用する革は、イタリア産(革をつくる業者はタンナーという)を使用。浅草の輸入代理店から購入している。
「一頭、一頭がナマモノだけに、革にキズがあったりするとそこは使えないんですよ」とひろみさん。広げてみると一頭分だけにかなり大きいのだが、実際に靴として使える部分は限られるのだという。キズやムラにしても、やむをえなくあるもの。持ち帰り、包装を開いてみる瞬間はドキドキするのだという。

おさむさん(以下敬称略)「ここの蚊に刺されたかのような小さな穴は、背中から生みつけてられていた虫が出てくることがあるみたいで、プロの人だとキズの直り具合を見て、これはいつ革にされたのかがわかるというんですよね」

ひろみさん(以下敬称略)「ムラ模様になっているのは、フェンスに体をこすりつけたときのキズがうっすらと残っていたりする。わたしたちはトラっていっているんですが、シワとか色ムラとかがあると、靴はパーツが小さいから目立つので使えない。だから一枚の革から靴にできるのは、どんなに多くても3足くらいかなぁ」

 こんなに大きいのに、わずかだなぁとあらためて革に視線をおとす。
「トラ」とは、革の表面にスジのように入っているシワで、牛の首から肩にかけての動作の活発な部分に生まれることが多い。革を染める行程でも部位によっては斑紋のムラがでたりするものらしい。
 そうしたムラやシワがないのが靴づくりには必要だが、現品を見て選ぶということはできないのだという。まず、仕入れ数が少ない個人の靴職人に対応してくれる、仕入れ業者が限られている。量産メーカーの国内生産が減退し、手作り靴の店が増えてきたことで状況が改善されつつあるとはいえ、力関係では卸業者が優位にある。

ひろみ 「泣きたいときもあります。そういうとき? 泣き寝入りですよね。ハハハ。でも、靴に使えない部分は、そういうムラが味になったりする靴ベラとかの小物にしたりとかするんですけどね」


 「革」については、このあとさらに、おさむさんから教えてもらうまですこしワタシは誤解していた。 キズやムラがあるのは言ってみれば粗悪品で、瑕疵のない品物がフツーに存在しているものだと。思い込んでいた背景には、そもそも牛は生きものであり、キズやシワは牛が「生きてきた証」。「ナマモノ」とはそういう意味で、色ムラは一頭一頭の「牛の個性」という想像が欠落していたからだ。
参考になったサイトは☞革の個性について

 

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 再訪する前に、あと追いながら靴の製作工程を解説した本を見て、びっくりした。細かく、たくさんの工程があることに。たとえば「すく」という作業。革は使用するパーツによって厚みを調整する必要があり「漉機」で削ぐことになる。

おさむ 「そうなんですよね。工程ごとに、漉くだけを専門にしている漉屋さん。中底をつくる中底屋さん。ヒモ屋さん、ヒール屋さんだとか、工程ごとに専門業者さんがいるんですよね」


ひろみ 「そうそう。内職の集合のような感覚がありますよね。戦後、靴の需要が高まって量産しなければ追いつかなかった時代に、そういうふうに細かく分業が進んだんだと思います。いまは国内の生産量も落ちてきて、またウチみたいに全部自分のところでやるというふうに戻ってきているんでしょうね」

おさむ 「靴底に使う、タックスという特殊な釘(5㍉ほどの石器時代のヤジリを思わせる)があるんですが、そういう釘だけを専門に作っている業者さんもあります。一箇所に集中したほうが都合いいからでしょうけど、浅草には昔からそういう業者さんが集まっているんですよね」

 

f:id:waniwanio:20170820194133j:plain☝漉機 革と革が重なる部分の厚みをすいて調整する


 ふだんワタシは、インタビューしてまとめる仕事が多い。億劫なのは、録音を起こす作業。質問する自分を聴きなおすのがとても嫌なのだ。「楽しい」と思うのは、切ったり張り替えたりしながら原稿に整え、編集者の目を経てゲラとなる。完成の一歩手前の段階なのだが、うずらのおふたりに、それぞれいちばん楽しい工程を聞いてみた。

おさむ 「うーん。いろいろあるんですが、靴を立体にしていく工程(靴の上側と底の部分を合体させる)と、計測した数値に合わせ、木型がその人らしくなってくる感じが楽しい。数字が整うというのは、メジャーで足を測った数字に到達するように差し引きしていくんです。
 もうすこし詳しく、ですか?
 セミオーダーの場合、サイズごとに用意した木型に革を張って調整していくんですが、木型に(お客さんの足にあわせるため)7㍉増やしたというときは、革をちょっと多めに張って、ちょっとずつ削りながら形を調整していく。その数字がだんだん整っていくときが楽しいんですが、足と木型の数字が離れているときは整うまでが大変で、ただそのぶん整ってくると楽しさは大きくなりますね。

 

f:id:waniwanio:20170820194236j:plain☝木型(いまはプラスティックのものが多い)に革を張る。足した部分が「足の個性」でもある


 コツですか? 最初の目測を誤らないということですかね。これは3枚張らないといけないだろうなという、その枚数を見誤らない。
 嫌いなのはそんなにないんですが、そうだなぁ、ヒールに使う革が硬いので専用の包丁で切るんですが、それは嫌かな。手袋をはめてするんですが、力がいるんですよね。そういえば“底屋さん”といって、靴底の革を金型で抜くのを専門にしている業者さんもいるんですが、ウチの場合、一足ごとに微調整をするので、型を一つに決めるという仕方が合わないでんですよね。
 一度だけ金型を作ったこともあったんです。初めて間もない頃、セミオーダーなら計測をしないでも出来るんじゃないかと思っていたときに、プレス機でガチャンとやって型抜きして繰り抜く。でも、これはウチには合わないというのがわかって使わなくなりました。そういえば、歯型だけを専門に作っている業者さんもいるんですよね。
 こうやってインタビューされるまでは、なんとなく分業はふつうの気分になっていましたけど、たしかに靴の工程は細かくて、工程ごとに専門にしている業者さんがいるんですよね。ウチも一箇所だけ“縫い屋さん”という業者さんに、硬い靴底の革を縫ってもらうのだけはお願いしています。張り合わせた分厚い革を縫うのって、専用の大きなミシンでないとできないんですよね」

 

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 同じ質問を、ひろみさんにもしてみた。

「自分の場所(ミシンの傍に縫製などを行う机がある)に座って、『ああ、これが仕事なんだなぁ』というときですかねぇ。ラッキーなだなぁって。アハハハ。あ、なんか、予想していたものと違っていました?」

──インタビューのときにニコニコとしてよく話されているのがひろみさんだったので、対人折衝的なことがお好きなのかなと。だから、そういう人との関係のことが出てくるかなと思ったんです。

「話したりするのは嫌いじゃないですけど。でも、なんかスイッチを入れてやっているところがあるんですよね。自分に『きょうはお客さんが来られるからね。ヨシ!!』って(笑いながら拳をつくる)言い聞かせる。で、お客さんを送り出したあとは、いつもダランとなる(笑)」
 
──なるほど。以前の取材で「お客さんとは、最低1時間は話を聞く」と話されていたのが印象につよく残っていたものだから。30分ではなく、どうしても1時間は必要だと考えている。そのポイントを雑誌のときにはうまく伝え切れず、読者によっては接客仕事だから「話を聞くのは当然」というふうに思われたみたいなんですよね。

「ああ、だから、お客さんと話をするのが好きだという答えが出てくると思われたんですね。そうかぁ……。わたしは(時間をかけて聞くということを)しなくてもいいなら、しないほうが楽かなぁ。でも、それだと出来ないんですよね。
 セミオーダーでもそうですが、とくにフルオーダーとなると、時間をかけて話を聞くというのは不可欠。だってね、つくるときに知りたい情報を知れていないと困りますから。たとえば、お客さんと対面して、どういう好みなのかを知りたいというときに、緊張状態にあるとわからない。すこしがつ話していくうちにようやくほぐれてきて、ああ、こういうものが好きなんだなというのがわかってくるものでしょう。
 チャチャチャッ、ビビッ!!と接客のプロは見極めるのかもしれないですけど、わたしはジワジワとやんないと出来ないんですよね。ほんとうに細かいことなんですが、ミシン目のステッチの幅も1㍉単位で変えられる。その1㍉で靴の表情が変わるので、とくにフルオーダーになると、そういうところもお客さんのフンイキに合わせたいんですよ。セミオーダーの場合だとサンプルを見て選んでもらうしかないんですが」

 

f:id:waniwanio:20170820194352j:plain☝ミシンはクラシカルな中古のものを探して探して購入


 サンプルから選ぶ「セミオーダー」の場合はお客さんの足に合わせて微調整するだけなので仕上がりのデザインの予想はつく。しかしすべて選択可能となると人は迷うもの。逆に「それも選ばないといけないの」とプレッシャーをかけることになりかねないという。

「それで出来上がったものに違和感があったとしても、お客さんは『あのとき自分が3㍉って言ったものなぁ。でも、イメージしていたものと違うなぁ……』って、がっかりされる可能性もある。それよりも話を聞いていったうえで『それだと、仕上がりはこっちのほうが好きですよね?』と提案してあげたほうがいいというか。
 わたしが、このひとには2㍉が合いそうだなと言ってやるのと、『2㍉でお願いします』と言われたからやるというのでは結果的に、言われてそうしたほうがハズす確率は高くなるんですよ」

──感覚がひとそれぞれで、2㍉が同じとは限らない?

「そう。お客さんは、こういうのとイメージは言えるんですよ。でも、具体的な2㍉というのがなかなか言えない。服とかでも、こういう感じのものが欲しいとは言えても、ここを何㌢詰めてとは言えないのに似ているかもしれない」

──マニュアルにならないところなんですね。

「そうなんですよ。感覚として、こういうのは嫌いだけど、こっちは好きという。その違いは、なかなか伝えづらいものですよね。そうやって話していく、どうしても時間がかかるんですよね」

 

f:id:waniwanio:20170820194417j:plain☝今回セミオーダーで作ってもらった靴 22,5の木型をもとに製作

www.uzura-village.com
  つづけて読む☞足は顔以上に個性的? - 「ウラカタ伝」

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