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わにわにinterview「ウラカタ伝」 (わにわに伝)

ふだん表に出ないけど、面白そうなことをしているひとを呼びとめ、話を聞きました。

番外編ルポ バリバリ昭和な職人さんたちの工房にオジャマしました。

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 発売中の「週刊朝日」5/5号に、「"限界"マイスターを探して」という特集取材の記事が載りました。近ごろ目にしなくなったけど…。失礼ながら「消えた」か「ひっそり」と続けているくらいに思われている職種の職人さんたちの仕事場におじゃましたスケッチです。

「写譜」といって、オーケストラやバンドの演奏には欠かせない、スコア(総譜)から楽器のパートごとの楽譜を書きだす仕事があるというのを今回初めて知りました。インタビューさせてもらった「東京ハッスルコピー」に所属する柳田達郎さんは、コンピューター化が進む中で、数少ない「手書きの写譜」を続けておられる職人さんで、「ミュージックペン」という平たいペン先の万年筆を20年以上愛用され、試し書きに「スラー」といわれる波線をススッときれいに描かれ、音楽のことはまったくわかんないながら、「きれいだわ」と見惚れました。しかもペン先は20年間、換えたことがないっていうからびっくり(笑)。顔も名前も出ない。でも、たとえばト音記号を見れば、あのひとかとわかる。そこが職人の腕の見せ所というか。以前取材した、スタントマンの世界にちょっとちかいです。

「顔が大きくて合うサイズがなくて困っていた」というひと向けに、オーダーメイドでレトロタッチのセルロイド素材の眼鏡を製作している「眼鏡ノ奥山」奥山繁さん。テレビで紹介されたりして土日も夜中まで作業しているとか。
 お疲れだろうに、ひとつひとつ丁寧に工具や機械を使って実演してもらって、自作のアラーキー眼鏡の似合うひとで、その間の会話が楽しくて、ついつい長居をしてしまいました。サンプルのデザインもカラーも豊富だし、小さいお店なのに、わくわくする。
 デザインを担当する4代目の息子さんがインターネット販売を取り入れてから、遠方からお客さんが集まりだしたとか。ネットの印象で、さぞかしシャレタ工房を思い描いていたら、大きな道路に面し、つい通りすぎてしまいかねない店舗の目立たたなさ。そこがまた惹かれます。

 オーダーメイドといえば、靴の「uzura」の高橋さんご夫妻。眼鏡もそうですが、靴を注文して作るというのを初めて知りました。探してみたら、若い職人さんで自分で工房をもって販売しているところがけっこうあるんですね。
 ひととおり取材を終えたころ、「試しに測ってみませんか」と促され、この上に足をのせていいの? とためらうようなきれいな絵をあしらった計測台(スコセッシ監督の「沈黙」に出演されていた塚本晋也さんの姿が思い浮かんだ)に足を置いてみました。

 木型担当の収さんは、測るのが大好きみたい。ひとの顔がいろいろなほど足の形はちがうそうで、このひとは足から見た人間学みたいなことが書けるんじゃないかなぁ。メジャーを手に「ああ、大変でしたねぇ」とやわらかい声で言われ、人生60年目にして、初めて知る事実にもうワタシ、アゼン……。
 というハナシは別途記すとして、ここも足に合うサイズの靴がなかったり、外反母趾だったりとかして人生を悲観しているひとにも、「大丈夫ですよ」と、来店までの経緯をじっくり耳を傾けてくれる。工房に来られたお客さんとは、いつも1時間は最低会話を交わすという。実際ワタシのだらだらしたインタビューにもいやな表情もしない。「靴に足を合わせるんじゃなくて、足に合わせて靴を作りましょう」とミシン担当のひろみさんは気のつく看護師さんで、収さんはドクターという感じ。ストーブの近くにまったりと「足袋」という猫が寝そべっていて、ここもまたつい長居をしちゃいました。

 

 この道一筋の、食品サンプル「ながお食研」の長尾社長さん。店舗からの受注とは別に、百貨店などの催事に出店していて、それも「かき混ぜている最中の納豆」とか「齧りかけの餃子」とか、なんか笑っちゃうような実寸大のサンプルを揃え、しかもそれが「なんでか知らないけど売れる」というのだから、びっくり(笑)。
 最近は、シンクの「三角コーナー」に捨てられた「生ゴミ」を試しに並べたら、それも売れたという。どれもリアルで「作るのは難しいんでしょう?」と訊ねても、「簡単。誰でもね、ちょっとやればできますよ」「本当に?」「コツさえつかんだら」と笑って返すあたり、職人て感じの江戸っ子おじさんでした。


 企画の発端は、土曜のお昼に久米宏さんがやっているラジオ番組に、神田でタイプライター修理の会社をされている人が出演されているのを聴いたこと。コンピューターに押されて姿を消したと思っていたら、ドッコイいまでもビジネス現場でバリバリ現役だという。修理をする会社も職人もどんどん減って、仕事が集中している。そうした話をされていた「ひかり事務機」福永成一さんが、久米さんを相手に上がってうまくしゃべれないと話している感じがとってもチャーミングで、このひとに会ってみたいと思ったことからでした。
 カメラマンの長谷川唯さんが撮影したベテラン社員のみなさんのポートレイトがいいです。どこもそうですが、職人さんの仕事場は狭いながらも作業の無駄がないように工具が配置されていて、見ていて楽しい!!

 

  楽しいといえば、銭湯のペンキ絵の現場です。専門の絵師さんは、いまや三人きり。女性で30代の若手は、たったひとりという、田中みずきさん。この「ウラカタ伝」でインタビューさせてもらった「困ったら、こまむら。」便利屋・駒村さんの伴侶でもある。
 北小岩の「鶴の湯」さんでのペンキ絵の描きかえ当日には、駒村さんもアシスタントで来られていました。インタビューはすでにすませていたので、写真撮影に立ち会い、もっぱら見ているだけでしたが、黙々と仕事をしている、それも脚立のテッペンに上って、刷毛をすいーと伸ばしていく姿はなかなか気持ちのいいもので、ワタシが高所恐怖症でなきゃ、もっと近寄って写真を撮りたいと思ったものでした。

 まあ、そんなこんなで、番外のご案内まで。ほかの現場でも、写真を撮っておくんだったなぁと、いま後悔ちゅう。

 

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