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わにわにinterview「ウラカタ伝」 (わにわに伝)

ふだん表に出ないけど、面白そうなことをしているひとを呼びとめ、話を聞きました。

指でかける、にじ

 わにわにinterview③島根と福島のハナシ 

島根県松江市在住のシンガーソングライター、
浜田真理子さんに話を聞きました【3/6】

 

浜田真理子さんの記事の最初から読み直す。

☟前回に戻る


 
 

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「みんなのしあわせ音楽会」に行ってきました。

 

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インタビュー・文=朝山実
撮影©山本倫子  

 

   2015年11月21日、土曜日。ワタシ出不精なんですが、浜田真理子さんが参加する、福島県相馬市で行われるコンサートを見に遠出しました。行きがかりというんですか。浜田さんが3年前からやっているスクールMARIKOとはどんなものなのか、この夏に島根に行ったしね。その浜田さんが参加する、ちょっと変わったイベントらしいから。

 

 

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 ということで、ロングインタビューではなく、今回は「浜田真理子を追いかけて相馬まで編」です。もう師走も押し迫り、あれから早いもので一月経ったんだなぁ。写真は、いつもの山本倫子さんです。


 福島県を訪れるのは昔『フラガール』という映画の製作にゴーが出るかどうかのシナリオづくりのころプロデューサに同行するルポの仕事で訪れたことはあるものの、相馬は訪れたことがない。ハワイアンのいわきには、のどかな東北という印象はあるものの、相馬の街並みはイメージがつかなかった。原発に近い、震災の被災地というのもあって、日常の暮らしはどんなものなのか。

 
上野からの相馬までの行き方を調べると、新幹線を使った仙台経由と福島から入る二つのルートがあるとわかりました。
 コンサートは午後3時の開始。浜田さんのほかにも、二組のグループが出演するらしい。「企画された佐藤さんにも紹介しますね」と浜田さんからもらったメールにはあったので、なりゆきで打ち上げに参加、なんてことになると宿泊の予約が必要だしとネットでホテルの検索をしてみた。連休初日の土曜ということもあってか、どこも満室だった。
 
 
さて、どうしたものか。近辺の駅のホテルも探してみたが、どこもふさがっている。いっそ仙台にしようか。福島にするか……。事務作業が不得手なワタシは、ネットをあちこちするだけで昼の数時間を費やしていた。できないライターだな。ささいなことだけど、こういうとき、へこみます。
相馬市内のホテルどこも空いてないんですよ」浜田さんにメールすると、「スクールMARIKOのスタッフも数人行くので、一緒に頼んでみましようか?」と返信があり、助け船だと、ちゃっかり聞いてもらうことにしました。

 すぐにメールがあり、取れましたよ、とのこと。ホテルの名前を見ると、さきほどまでネットで何度も見た駅前のホテルでした。
 あれ? 
調べなおしてみたけど、やっぱりネットでは満室。地元民ならではの隠れたコネとかあるのだろうか。
 不思議におもっていたら、コンサートの打ち上げの席で、ことの真相が明らかに。て、そんな大げさなことじゃないですけどね(笑)。

 コンサートの裏方をされている、本業はCDショップでイベントの仕切り屋を兼ねているという、顔だち頼もしそうなモリタさんの話では、空き部屋がないのは除染作業を請け負っている会社が市内のホテルの部屋を長期に押さえているためらしい。
 つまり、たとえ利用客ゼロの日があったとしてもホテルはどこも満室になっている。除染作業には必要なのだろうけど、それだと観光客はどうしたらいいのか……。最初はね、「音楽会」のお客さんで一杯なんだとか想像したけど。
 それで、今回のワタシたちの部屋は、頼んで押さえている会社から分けてもらったのだとか。

「それだと、ホテルの料金は?
「支払いはもう終わっています」
「あ、じゃ、支払いはどうすればいいんでしょうか」
 
ワタシ、ホテルはカードで済ませるつもりだったので、財布に現金のゆとりがなかった。
「それだったら、ここに後日振り込んでもらえますか」
 差し出されたのは「音楽会」のチラシだった。いまはフライヤーというんだっけ。「ここに、お願いします」と指さされた、振込口座の上に小さくこんな文字が。

 当イベントでは皆様からのご寄付を募集しております。小額でも大歓迎です。


 コンサートじたいは「入場無料!!」。こちらは大きな太字である。浜田さんたちを呼んでのコンサートなのに。
 となると、宿泊の手配だけでも余分な手間をかけているわけだし、ここは部屋代+寄付だろう。さあ、どれくらい? お気持ち相場は苦手だなぁ。あとでゆっくり考えよう。というようなことをコンサートの打ち上げの席で考えていた。黙っているときに「いま何か考えていました」と聞かれたりする。いつも、ぼーっとさえない顔をしているからだろうけど、そんなチマチマしたことが頭をしめている。つまらんライターだなぁ。

 ワタシの悪いクセで、行ったことのない場所(ひとに会うのはもちろん)行くまでには、けっこうあれこれ余計なことに気をまわして、いらないことを考えてしまう。ことの始まりが浜田さんをインタビューした流れでの、なりゆき的な相馬行きである。どういう趣旨のものなのか詳しくも理解していない。福島の復興にかかわる催しらしいが。

 見ず知らずのひとたちが企画したコンサートに押しかけていって、「ハマダさんを取材しています」覗かせてくださいというのは、どうも「あんた誰?」な、お邪魔虫じゃなかろうか。だと嫌だなぁ。やめようか。つい思考は後ろ向きになる。反面、自分でも呆れるくらい、行った先で図々しかったりするんだけど。

 さて、ここからは当日のハナシ。新幹線の福島駅に降り立つと、ホームに駅員さんたちが、ゆるキャラと一列に並んで、降り立つ乗客を出迎える歓迎の儀式をされていた。ちょっとウルルーとなる。ささいなことだけど。福島いいな。サプライズというものか。
 10時45分発の相馬市役所行きの高速バスに乗り、相馬の駅に着いたのは、お昼12時過ぎだった。
 
仙台から入るのと福島経由とで迷ったものの、せっかくなので浜田さんのリハーサル風景を撮影したく、到着時刻から逆算して早くにつける福島からのバスに決めた。
 高速バスを降りてから会場までは徒歩だと20分くらい。迷わず行けるだろうか。地図を眺めると、行く前いつもながら不安になる。自慢にはならないが、ウルトラ級の方向音痴なんだよね。
震災後、現在も「常磐線」は相馬の区間は切断されたままで、代行バスが運行しているらしい。そんな事情も今回、初めて知った。

 福島駅発のバスはすぐに山道に入っていく。車窓を眺めていると、まっ赤に繁った木が点々と遠くに見えて、なんだろうと思っていたら、柿じゃないか。しかも大きい。

 満開の花のように、熟れきっている。なぜ収穫しないんだろう? 

「こっちじゃ、誰も柿をとったりしないから」
 と教えてくれたのは、コンサート会場まで安全を期して乗った、タクシーの運転手さんだった。
「柿、こっちのひとは食べないんですか?  おいしそうなのに」
「うーん、食べないなぁ。食べるんなら、スーパーにある和歌山とかのところのを買って食べているなぁ」
「それは、食べあきちゃっているということですか」

「うーん、まあ……」

 なんとなくそこで話は途切れた。だれも収穫しない柿は、ずっと落ちるにまかされているらしい。もったいないと、そのときはカメラマンの山本さんと首を傾げていたのだった。

 会場に着くと、浜田さんが玄関先にいた。待ってくれていたらしい。ちょうどこれからリハーサルだというので、様子を撮影させてもらった。実際にするのは、カメラマンの山本さん。すべておまかせで、ワタシはいつもながら眺めているだけです。

 会場は小学校の体育館のようなところで、舞台を使わず、ピアノを床に設置し、パイプ椅子がそれを取り囲むように並べられていた。200席くらいだったかな。見上げる感じでなく、まっ平らな広場でのコンサートみたいな感じだ。

 

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 会場の脇に立てかけられていた、パネルの絵に見とれてしまった。
 展示されているのは、南相馬市にある自立研修所「えんどう豆」の、くるみさんの作品。作為がないというか、ほめられたいということすら感じられないタッチの絵だ。えんどう豆は、ダウン症のこどもたちの施設らしい。


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 浜田さんのリハーサルを見終えて、会場の出入り口に向かうと、ひとの動きが賑やかだった。机が並べられ、いろんな物販スペースができあがっていく。縁日のようだ。楽しそう。

 

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 近寄っていくと、「卵かけご飯」が食べられるという。限定50食。相馬の佐藤徹さんの「産地特産・こだわりの新米コシヒカリ」と「相馬ミルキーエッグ」と「相馬・山形屋商店」の特選醤油。相馬ならではの黄金セットらしい。

「おいしいですよー」
 元気な呼び声に、一膳注文しました。300円だったっけ?
「大盛できますよ」
「あのぅ、小食なので、ふつう盛のすくなめにできます」
「すくなめ、できますよ。どれくらいにします(笑)」
 おねえさん、
愛想がいい。

 
激ウマでした!!  たまごが、ちがっていました。ワタシ、現場ノリでつい食べけど、生卵苦手でふだん食べたりしないんけど。売り子のお姉さん方の笑顔にノセラレて、「こだわりのお米1㎏」の袋入りもつい買っちゃいました。2㎏だと鞄の荷物と考えて断念しただろうけど。
 

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「よかったら、見ていってください」売り子のお姉さんにいわれて目を移すと、「Ⅰ型糖尿病」に関するパンフレットが置いてあった。
 糖尿病というと、成人病。不摂生によるものとされがちだが、「Ⅰ型」は子供のころに発症することが多く、その原因がわかっていないという(阪神タイガース岩田稔投手もそうなんですね)。
 日に何回かのインシュリン注射を続けなければいけないが、黙っていると気づかれない。だから、学校や職場など周囲の理解も必要になってくる。そういう子供のいるお母さんたちでつくったのが「たんぽぽの会」で、病気のことを知ってほしいというのもあって、卵かけご飯の販売ボランティアをされていたらしい。そのお隣にはMARIKOの新聞などの掲示も。

 

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 反対側のブースでは、「えんどう豆」製作の缶バッチやTシャツ、クリアなどのグッズ販売されている。くるみさんの絵がプリントされたシャツが欲しくて、ワタシ、縁日でじっと立ち止まっているコドモみたいにして迷ったものの、冷静になるとカワイすぎるというかジブンが着るにはムリがある。同じ絵柄のトートバックを買い求めました。

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f:id:waniwanio:20151223150412j:plain☝欲しかったシャツが左隅に くるみさんは左から二人目の彼女

☟出演者の控室。女子部屋ですね 

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☝浜田さんの対面に座ってられるのは、「1-GATA」のボーカルの中新井美波さん。
チャキチャキの神戸っ子。元駅伝ランナー。すごい。


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福島県相馬市出身のシンガー・堀下さゆりさんと

 

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 コンサートのトップは「1-GATA」。ボーカルの中新井さん。ベースの山川浩正さん(元THEBOOM)。キーボードと作曲の吉田敬さん。3人のメンバー全員がⅠ型糖尿病の患者で結成されたバンド。病気について言明しないとかわらないくらい、元気一杯のステージ。「キミにありがとうと言うよ」という「キミ」という、未来に向けた歌がよかったな(「1-GATA」のところをクリックすると歌声が聴けますよ)。
 一日に数回のインシュリン注射は欠かせないと聞いて、注射が大人になったいまでも怖くてしょうがないワタシはたいへんだと思ったけど、10代で発症した吉田さんが「歯磨きをするようなもの」と言ったのが印象に残った。歯磨きとちがうのは、一回でも注射をサボると体調がわるくなるという。

 続いて、「えんどう豆」のみんなの登場です。
「まけないタオル」を手に、震災にも原発事故も「負けないぞー、まけないぞー(^^♪」と歌い、
「ぼくらを育てたこの町に虹をかけよう」の合唱。この日のために練習を重ね、ふだん前にでたがらないひとたちが声を出していたとか。
 マイクを手にした眼鏡の男の人が、コンサートを企画した佐藤定広さん。南相馬ファクトリーの代表で、次回のロングインタビューに登場します。



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 ☝ 出番前の会場の後ろで

「負けないぞ」タオルは、被災地の応援のためにつくられたもの。丈が足りずに巻けないというのとかけたものだけど。唄って、すごいなぁと思ったのは「えんどう豆」の合唱を聴いたとき。泣かせる話とか「さあ、みんなで」とかいうのは、協調性に欠ける性格ですごく苦手で居心地がわるかったりするのだけど、歌に合わせ、指で虹をかけるというのにワタシもね、すみっこで手をつい上にあげていました。
 

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 あまりに盛り上がったもんだから、このあとに登場する歌い手はタイヘンだなぁと思っていたら、3番手の堀下さゆりさんは、おっとり、やさしい歌声のひとで、ほっこりあったまった空気をそのまま大事にしておられた。
 堀下さんの唄声は、子供番組に出てきそうなくらい、かわいい。出演順がよく考えられているなぁと思ったら、「みんなのうた」で放送され話題になった「カゼノトオリミチ」など歌われている自然体のひとだった。

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 最後が、浜田真理子さん。
「あなたへ」「遠い場所から」「教訓Ⅰ」「貝殻節」「君に捧げるラブソング」「胸の小箱」「はためいて」だったかな。記憶なのですこし曖昧。

 

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 なかでも、リハのときに聴いた「君に捧げるラブソング」は、浜田さんの初期の「あなたへ」の、何年も何十年もしてからの、あなたと呼びかけられたボクからのアンサーソングのように聞こえて、いい新曲だなぁとしみじみしてしまった。
 あとで浜田さんにそう話すと、
「あれは、岡林(信康)さんの昔の歌なのよ」
 オリジナルと思いこんでいたといったら、浜田さんいわく、震災後にファンのひとから教えてもらった歌だという。

「カバーするときは何回もコピーにコピーを重ねるでしょう、あたし」
 浜田さんいわく、上書きするように何度もカバーするうちに自分の歌となり「元唄がわからなくなる」のだという。そこまでいけば、もうオリジナルの域だし、そうならないことにはステージで唄わないのが浜田真理子らしさなのかも。なんだか岡林の歌が逆に聞きたくなったなぁ。


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 浜田さんがカバーしていた「君に捧げるラブソング」に関して、こんなブログの記事を見つけた。

岡林信康「君に捧げるラブ・ソング」 - 凛太郎の徒然草

 1970年代後半の歌で、ただのラブソングではなかったらしい。
 しかし、ネットを探せば居ながらにして聴けてしまうとは便利なものだなぁと思うとともに、これじゃCDの売上げで生活を維持するなんてキビシイわなぁ。それでも手元に置いておきたくなる唄声にするか。あるいは、握手の引き換え券に付いてくるモノくらいにしちゃうかだろうけど。

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☟「音楽会」のウラカタ、スタッフと出演者の方々にお客さんも

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☟つづく(次回「みんなのしあわせプロジェクト」代表の佐藤定広さんに話を聞きました編)



 

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